「うちは歩合給を厚くしているから、残業代もその中に含まれている」──そう考えている経営者様は、今すぐその賃金規定を見直す必要があります。運送業界で広く採用されている歩合給制度ですが、実は「計算の仕方を一歩間違えるだけで、過去の残業代が全額未払い扱いになる」という極めて高いリスクを孕んでいます。
近年の最高裁判決では、歩合給から残業代相当額を差し引くような仕組みが次々と「無効」と判断されています。一人のドライバーの訴えが「会社側が4億円もの和解金を支払う」という事態に発展した事例も現実に起きています。時効の延長により、未払い残業代リスクはかつてないほど巨大なものとなっています。
運送・タクシー業界に激震を与えたのが、2020年の「国際自動車(第2次)事件」の最高裁判決です。この裁判では、会社側が採用していた「歩合給から残業代を控除する仕組み」の有効性が争われました。
当時の賃金制度は、売上高に応じて決まる歩合給の中から、割増賃金(残業代)を差し引くというものでした。つまり、「時間外労働をしても、内訳が歩合から残業代に変わるだけで、手取り額は変わらない」という仕組みです。一見、合理的な歩合制に見えますが、最高裁はこれを「労働基準法37条(割増賃金の支払い義務)の趣旨に反する」として無効と断じました。
この判決の結果、会社側は最終的に約4億円もの和解金を支払うことで合意しました。たった一つの賃金項目の解釈ミスが、企業の現預金を一瞬で吹き飛ばすほどのインパクトを与えたのです。歩合給と残業代の関係を正しく整理できていないことは、経営において「いつ爆発するかわからない爆弾」を抱えているのと同じです。
統計を見ても、労働訴訟の類型で最も多いのが「賃金(残業代等)」であり、全体の4割以上を占めています。特に運送業において、こうした紛争が激化しているのには3つの理由があります。
長距離運送や渋滞、荷主先での長時間の荷待ち・荷役など、ドライバーの労働時間は他産業平均と比べて1.1倍〜1.2倍も長くなっています。労働時間が長ければ長いほど、未払いが発生した際の金額は雪だるま式に膨れ上がります。
運送業は、タコグラフ、業務日報、アルコール検知記録、高速道路の使用履歴など、「何時にどこで働いていたか」の記録が非常に多く残る業界です。ドライバー側が弁護士を立てた際、これらの記録を基に緻密な残業代計算が行われるため、会社側が「そんなに働いていない」と反論することは極めて困難です。
民法改正に伴い、残業代の請求権(時効)がそれまでの2年から最長5年(当面の間は3年)へと延長されました。これにより、一人が訴えを起こした際に請求される金額は従来の1.5倍以上となり、経営へのダメージがさらに深刻化しています。
歩合給制度自体は、ドライバーのモチベーション向上や残業代計算上の基礎単価を低く抑えられる(割増率が0.25で済む)といった大きなメリットがあります。しかし、それを享受するためには、以下の「法的防壁」が不可欠です。
「通常の労働時間の賃金」と「割増賃金」が、給与明細や規定上で1円単位まで明確に区分できている必要があります。また、その手当が「残業に対する対価」として支払われている実態が必要です。過去の判例(高知県観光事件など)でも、この判別ができない場合は、歩合給の中に残業代が含まれているという主張は一切認められていません。
完全歩合給であっても、時間あたりの賃金が最低賃金を下回ることは許されません。また、荷待ち時間などの不可抗力で売上が上がらない場合でも、一定のミニマム(保障給)を支給する仕組みを整えておくことが、労使トラブルを防ぐ上での大前提となります。
もし未払い残業代請求をされてしまった場合、対応が遅れるほど会社側の損失は膨らみます。社内での話し合い(ステージA)で解決できれば被害は最小限ですが、代理人(弁護士)が登場し、労働審判(ステージC)や訴訟(ステージD)にまで発展すれば、守秘義務のない場での争いとなり、他の社員への波及も避けられません。
理想は、「紛争が起きる前に、法的裏付けのある賃金体系へ移行すること」です。納得感のある給与体系は、ドライバーの離職を防ぐだけでなく、将来の数千万円単位の法的リスクをゼロにする最大の投資になります。
「今の歩合給制度で、本当に裁判に勝てるのか?」「2024年問題に対応した新しい賃金体系をどう作ればいいのか?」──その答えを経営者一人で出すのは危険です。
一通の内容証明郵便が届いてから慌てるのではなく、運送業界の商習慣と労務法務の両方に精通した専門家に相談し、自社の「健康診断」を行うことから始めてください。
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