「社員とのトラブルが長期化している」「どう対応すればいいか分からない」──運送業では、解雇・賃金・ハラスメント・長時間労働など、労務トラブルが起こりやすい構造があります。その状況を放置すると、従業員との信頼関係が崩壊し、離職連鎖や信用低下に発展することも。
ここでは、労務トラブルの原因と自社で行うべき初動対応、外部の専門家に相談すべきタイミングや支援内容について解説します。
運送業では、運行日報と勤怠記録の内容に乖離が生じることが多いため、割増賃金の計算ミスや過少支給が発生しやすくなることも。これらは、計算方法への理解不足や記録のズレに起因しており、従業員とのトラブルの温床となっています。
管理職がトラブルの対応に不慣れで、「何がハラスメントに当たるのか」「どこまで対応すべきか」の判断が曖昧なまま現場任せになっているケースも。加えて、従業員が安心して相談できる窓口が設けられていない企業も多く、問題の早期発見や解決が困難です。こうした体制の未整備がトラブルの深刻化を招いています。
就業規則や社内ルールが現在の働き方や運行実態に対応していないため、現場で問題が発生しても明確な判断基準がないのが現状。そのため、制度と実態のギャップがトラブルを助長し、従業員との信頼関係にも悪影響を及ぼす恐れがあります。
労務トラブルを放置すると、従業員の不満が蓄積し、やがて訴訟や告発に発展するリスクがあります。「相談先がなく声を上げられなかった」「会社の対応に失望した」と感じた従業員が、最終的に外部機関に助けを求めるケースは少なくありません。
労基署の調査が入り、是正勧告や指導を受ける事態に発展することも。そうなると、対応に追われるだけでなく、法令違反が公になることで取引先からの信用を失ったり、採用活動に支障をきたすなど、企業全体の信頼失墜につながります。
未然の対応を怠ることが、経営リスクを高める結果につながる点に注意が必要です。一人の離職が引き金となり、他の従業員にも不安が広がり、離職の連鎖が起こる恐れもあります。そうなると、職場の士気は低下し、モチベーションや生産性の悪化につながるだけでなく、顧客対応や安全管理にも悪影響を及ぼします。
万が一トラブルが発生してしまった場合、その後の初期対応が事態の悪化を防ぐ鍵となります。ここでは、経営者がついやってしまいがちなNG対応と、取るべき正しい初動を解説します。
NG対応例:ドライバーの主張に対し、感情的に「そんなはずはない!」と反論してしまう。
正しい初動:まずは冷静に相手の言い分を最後まで聞きます。その上で、「会社として事実確認をしっかり行い、後日正式に回答します」と伝え、専門家に相談する時間を確保しましょう。
NG対応例:カッとなって「そんなに不満なら辞めろ!」と解雇を言い渡してしまう。
正しい初動:解雇には法的に厳格な手続きが必要です。その場での発言は「不当解雇」として訴訟リスクを高めるだけです。懲戒処分を検討する場合でも、必ず就業規則の規定に則って段階的に手続きを進める必要があります。
トラブルの初動対応として、「いつ・誰が・何を見たか」「どのように対応したか」といった情報を正確に記録することが重要です。曖昧な対応や記録の欠如は、後のトラブル拡大や責任の所在不明につながることに。客観的な記録を残すことで、社内での適切な判断や再発防止策の検討が可能となります。
トラブル初動では、管理職1人で対応すると主観や感情が入りやすく、公平性を欠く恐れがあります。そのため、複数名での対応や部署をまたいだ確認体制を取ることで、客観性と信頼性を確保し、従業員が安心して事実を話せる環境を整えることが求められます。
労務トラブル初動では、感情的対応を避けることが重要です。一方的な否定や感情的な指摘は、当事者の信頼を損ない、逆効果となることも。誠実な説明を心がけ、冷静かつ公正な対応で事実確認を丁寧に行うことで、当事者の理解と協力を得やすくなります。
社内規程に基づく対応は、客観的かつ一貫性のある処理を可能にし、説明責任を果たす基盤となります。これにより、当事者に対して透明性のある説明ができ、誤解や不信感を軽減。また、規程遵守がトラブルの再発防止や社内の公平性維持にもつながり、健全な労務管理体制の確立に寄与します。
コンサルや専門家への相談は、解雇通知を出す前や退職予告後、未払い賃金請求があった時点、パワハラの申告時、また問題が長期化する兆候が見え始めた段階で速やかに行うべきです。
早期相談により、法的リスクの把握や適切な対応策の検討が可能となり、トラブルの早期収束や関係者の納得を得る対応に結びつきます。さらに、タイミングを逃さず専門家の支援を得ることで、企業の精神的・実務的負担を軽減することができます。
まず、関係者のヒアリングや事実確認などによる状況整理からスタートします。次に、労働法や労働基準法に基づく法的アドバイスを提供し、リスクや対応策を明確化。必要に応じて、解雇通知や契約書、対応記録などの書類整備をサポートし、証拠としての有効性を高めます。
さらに、就業規則や社内規程の見直しを行い、労務管理体制の強化を図るなどのプロセスを通して、トラブルの円滑な解決と組織運営の健全化を支援します。
運送業の労務トラブルでは、相談内容に応じて専門家を使い分けることが重要。主な判断ポイントおよびトラブルの種類と専門領域は、以下のとおりです。
| トラブルの種類 | 弁護士 | 社労士 | コンサルタント |
|---|---|---|---|
| 解雇・懲戒処分 | ◎(法的リスク判断・代理) | ○(規程整備・事務手続き) | ○(初動対応・助言) |
| 未払い残業・賃金請求 | ◎(対応交渉・訴訟) | ○(給与計算・労基対応) | ○(改善提案・制度設計) |
| 就業規則・制度設計 | △(確認程度) | ◎(作成・改定) | ◎(構築支援・運用指導) |
| 労基署・労働局対応 | ○(必要に応じて代理) | ◎(手続き代行) | △(助言) |
「もう少し早く動いていれば…」と後悔するケースは少なくありません。トラブルの芽が小さいうちに適切な対応を講じることが、企業にとって最も負担の少ない選択です。
社内対応には限界があるからこそ、第三者の視点で問題を整理・改善できる外部の支援が、長引かせない対応の鍵になります。
当サイトでは、残業代・人手不足・運送費に悩む運送事業者へ向けて、課題領域別に強みを持つ運送業コンサル会社3選を紹介しています。
給与制度の見直しやドライバー採用強化、荷主との交渉改善など、いま感じている経営課題に合った支援策をぜひチェックしてみてください。
また、2024年問題の本質的な対応には、運行体制だけでなく就業ルールや労務管理の整備が欠かせません。トラブルを未然に防ぐためにも、今の体制にどんな改善の余地があるのかを整理しておきましょう。
労務トラブルは、「発生後の対処」よりも「発生を防ぐための仕組みづくり」が鍵です。また、発生時には冷静な初動と専門的な対応が求められます。感情に流されず、第三者の視点を活かして問題を整理し、法令・制度の整備とともに再発防止まで対応できる体制構築が、今後のリスク対策につながります。
トラブル初動で自社が行うべきことをきちんと整理し、誠実に対応するとともに、労務に強いコンサルタントの支援を受けることで、トラブルの円滑な解決および再発防止に努めることができます。
運送業コンサル会社を選ぶ際には、自社の実態や課題を整理、明確化して、該当する領域の支援に強みや実績があることがポイント。ここでは、給与体系、ドライバー採用、荷主交渉に強みがある運送業コンサル会社3選を紹介します。
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