「マネジメント制度はあるけど、PDCAが回っていない」「書類だけの安全対策になっていないか不安」──運送業において運輸安全マネジメント制度は形だけでは意味がありません。本記事では、制度を現場で機能させるための見直しポイントと、コンサルタントの支援内容を紹介します。
運輸安全マネジメントでは、経営トップが安全方針を定めることが求められます。しかし、方針を掲げるだけで、その後の進捗確認やリソース配分に経営トップが関与していないケースが見受けられるのです。また、安全目標が「事故ゼロ」といった抽象的なスローガンに留まっていると、現場の運転者や管理者は具体的な行動に移しにくくなります。
結果として、経営層と現場の間に安全に対する意識の差が生まれ、マネジメントが機能不全に陥る一因となります。
安全対策が管理者から現場への一方的な指示になると、運転者は「やらされ感」を抱きがちです。例えば、ヒヤリ・ハット報告が「提出すること」自体を目的にしてしまい、なぜその情報が必要なのか、どう事故防止に活かされるのかが現場に理解されていないことがあります。
また、現場の管理者が運転者とのコミュニケーションを十分に取れず、指導やフィードバックが一方通行になると、現場は安全活動を自分ごととして捉えられなくなります。
運輸安全マネジメントはPDCAサイクルを回すことが重要です。しかし、「P(計画)」と「D(実行)」は行われても、「C(評価)」と「A(改善)」が機能していない場合があります。活動記録が残っていても、それを分析して次の改善に活かす仕組みが定着していないと、制度は形骸化していきます。
安全マネジメントが形骸化していると、事故やヒヤリ・ハットが発生した際に、その根本原因を深く分析するプロセスが機能しません。「運転者の不注意」といった表面的な原因で処理され、「今後は注意する」といった精神論での対策に留まりがちです。具体的な再発防止策が行われないため、結果として同種の事故や法令違反が繰り返し発生するリスクを抱え続けることになります。
運輸安全マネジメントの実施状況は、運輸支局による監査の対象項目です。安全管理規程の未整備や、安全方針の不十分な周知、内部監査の未実施、教育訓練の記録不備などが確認された場合、行政から指摘や是正勧告を受ける可能性があります。特に、重大事故を発生させた場合や、貸切バス事業者の許可更新時などには、安全管理体制の構築・運用状況がより厳しく確認されることになります。
経営層が安全に対して本気で取り組んでいない姿勢は、現場の従業員に伝わります。例えば、ヒヤリ・ハット情報を提出しても何のフィードバックもない、安全対策の提案をしても評価されない、といった状況が続くと、従業員の安全に対する意識は低下します。真面目に安全活動に取り組もうとする従業員の意欲も削がれ、結果として組織全体の安全文化が醸成されないという悪循環に陥る可能性があります。
実効性ある安全マネジメントは、経営トップが策定する明確な安全方針から始まります。方針を社内外に示すだけでなく、それに基づき現場が行動に移せる具体的な「数値目標」を設定することが重要です。例えば、「追突事故件数を前年比でX%削減する」「ヒヤリ・ハット報告を月X件以上収集する」など、スローガンではなく測定可能な目標を定めることで、取り組みの進捗と成果が評価しやすくなります。
設定した数値目標を達成するためには、自社の実態に即した安全計画が必要です。過去の事故情報、ヒヤリ・ハット、日常の運行データなどを分析し、自社特有のリスクを特定します。このリスク評価に基づき、対策の優先順位を決定し、「特定の交差点の危険マップを作成・共有する」といった具体的な実施項目を計画に盛り込むことが求められます。
事故を未然に防ぐため、運転者が経験したヒヤリ・ハット情報を積極的に収集する仕組みが重要です。ただし、収集が目的化してはいけません。集まった情報を分類・分析し、「なぜそれが起きたのか」「どうすれば防げたか」を組織として検討し、具体的な再発防止策に活用することが不可欠です。
安全計画(Plan)が予定通り実行(Do)され、成果が出ているかを評価(Check)するため、少なくとも年1回以上の定期的な内部監査が求められます。監査は、単に書類が揃っているかを確認するものではありません。安全方針が現場まで浸透しているか、安全活動が実効性を伴っているかを評価する視点が必要です。あらかじめ評価基準や監査手順をルール化し、客観的な評価と改善(Act)に繋げることが重要です。
策定した安全計画や改善策を現場に浸透させるには、継続的な教育・訓練が欠かせません。また、管理者による運転者への日常的な指導や、安全に関する情報が経営層と現場間で双方向に流れる報告・連絡体制も必要です。
一連の安全活動を、特定の期間だけ行うイベントではなく、日々の業務プロセスの中に組み込み、組織の「習慣」として定着させることが、安全文化の醸成に繋がります。
第三者機関のコンサルタントは、まず事業者が策定している安全管理規程や各種マニュアルと、現場での実際の運用状況を比較・診断します。経営トップや管理者、現場の運転者へのインタビュー、点呼や日報といった記録類の確認を通じて、制度が機能していない箇所や、法令要求事項とのギャップを客観的な視点で洗い出し、課題を明確にします。
診断結果に基づき、事業者の実態に合った安全目標や安全計画の見直しを支援します。例えば、ヒューマンエラーのリスク分析や、経営層から現場層までの安全意識調査などを通じて、取り組むべき課題の優先順位付けを行います。その上で、設定した目標を達成するための具体的な実行プロセスの再構築をサポートし、PDCAサイクルが円滑に回るよう支援します。
安全マネジメントを継続的に運用・改善するには、活動の記録と情報共有が不可欠です。内部監査用のチェックリスト、ヒヤリ・ハット報告書、事故報告書など、PDCAサイクルを回すために必要な各種記録様式の整備や見直しを支援します。
また、収集された安全情報が経営トップや関連部門へ円滑に報告され、迅速な分析と意思決定に繋がるような、実効性のある情報共有フローの整備も行います。
制度やルールを整備するだけでなく、それを運用する「人」の育成も支援します。運輸安全マネジメントのガイドライン解説、管理者向けの指導・コミュニケーション研修、運転者向けの危険予知訓練など、事業者の課題に応じた教育訓練の実施をサポートします。また、内部監査が実効性のあるものになるよう、監査員の養成研修の実施や、実際の内部監査に帯同して監査の進め方を助言するなどの支援も行います。
運輸安全マネジメント制度は、あればよいものではなく、組織全体の安全文化を育て、事故ゼロに近づくための行動指針です。形骸化した制度を見直すには、外部の専門家による診断と再設計が有効です。安全を会社の“文化”に変える第一歩として、いま制度を機能させましょう。
運送業コンサル会社を選ぶ際には、自社の実態や課題を整理、明確化して、該当する領域の支援に強みや実績があることがポイント。ここでは、給与体系、ドライバー採用、荷主交渉に強みがある運送業コンサル会社3選を紹介します。
画像引用元:ビジネスリンク
(https://www.b-link.jp/consulting-menu/transport-consulting/)
おすすめな理由
\給与体系を合法・公平化/
画像引用元:LIGO
(https://www.li-go.jp/saiyo/)
おすすめな理由
\ドライバーをすぐ確保/
画像引用元:船井総研ロジ
(https://www.f-logi.com/)
おすすめな理由
\荷主交渉が成功/