「監査で就業規則の不備を指摘された」「何年も見直していない」──そんな企業は要注意です。就業規則は労務管理の基本であり、2024年問題や同一労働同一賃金などの法改正に対応できる内容かが今問われています。
ここでは、運送業の古い就業規則を放置することのリスクや就業規則が形骸化する原因について紹介。また、運送業特有の就業実態に即した規程見直しの要点と、コンサルタントによる支援内容について解説します。
運送業では、実態と乖離した旧来規定による就業規則が多く、例として「休憩時間が明記されているが、実際は連続運転で取得困難」「拘束時間が法定内とされていても、現場では超過が常態化」などの問題があげられます。
2024年問題や同一労働同一賃金への未対応が続くと、法改正に即した就業規則が整備されていないと判断されることも。そのため、監査の際に法令違反として指摘され、是正勧告や業務改善命令の対象となるリスクがあります。
就業規則に懲戒処分の規定がない場合、不適切な行為に対して処分を行っても法的根拠を欠き無効とされることも。また、労働条件が曖昧なまま、従業員とのトラブル時に説明責任を果たせないと、企業側が不利な立場になるリスクがあります。
法改正や業態変化への未対応は、就業規則の形骸化の原因になり得ます。たとえば、制度改正後も旧条文を修正せずそのまま使用。また、配送形態が変化しても勤務形態や手当の規定が更新されずに、現場実態と乖離したまま放置されているケースもみられます。
就業規則を作成する際、他業種向けの規程をそのまま転用したテンプレートを流用することにより、内容が現場実態と合っていないことも。実務と乖離したままの規程が運用されることで、従業員との認識差や法令違反のリスクを孕むことになります。
就業規則が長期間見直されず、法改正や現場実態の変化に対応できていないケースも。さらに、社内への周知も不十分で、現場の従業員が規則の内容を把握しておらず、トラブル時に適切な対応が取れないなどの問題が生じることもあります。
就業規則の見直しでは、コンサルタントは、まず法令違反や実務との乖離を確認するリスク診断を行い、就業時間や休憩、服務規律などの規定を点検します。運行管理者やドライバーへのヒアリングも実施し、実態に即した課題を整理します。ちなみに、改訂時には従業員代表からの意見聴取が法的に必要であり、現場の声を反映した規定作りが重要です。
運送業の就業規則見直しでは、一般的なテンプレートではカバーできない業界特有の項目整理が不可欠です。コンサルタントは、安全運転義務、点呼ルール、拘束時間管理、懲戒・遵守事項など、実務に即した具体的な見直しを実施。特に、2024年問題への対策として、運行管理やシフト体制、安全確保の仕組みを規則に反映させることを重視します。
2024年問題や同一労働同一賃金といった最新法令への対応も不可欠です。例えば、拘束時間や休息期間の正確な記載がなければ労基法違反となる恐れがあり、また、職務内容に応じた手当設計が不明確だと待遇差の説明が困難に。コンサルタントは、法改正に即した改訂を行い、法令遵守と従業員とのトラブル回避の両立を図ります。
コンサルタントは、現場実態や最新法令を踏まえた規程案の作成だけでなく、労働基準監督署への提出対応も行います。特に提出時には、法令に基づいた形式や記載要件の遵守が求められるため、労基署対応に精通した専門家がサポートすることで、指摘や差し戻しのリスクを回避することが可能です。
コンサルタントは、見直し・改訂にとどまらず、従業員への説明会の実施や周知文書の整備を通じて社内理解を促進します。また、意見聴取の場を設けることで従業員の納得感を高め、規則の実効性を確保。現場に即した説明や段階的な導入支援を行うことで、スムーズな運用体制づくりを支援します。
「何年も見直していない」「現場と合っていない」と気づいていても、実際に見直しを進める余裕がない企業は少なくありません。法改正や現場実態への対応を怠ると、気づかぬうちに法令違反や労務トラブルに発展するリスクがあります。運送業に特化した専門家のサポートを得て、実効性のある規定づくりを進めましょう。
「具体的にどこを見直せばいいのか分からない」という企業は少なくありません。ここでは、特に運送業の古い就業規則で頻繁に見られ、かつ放置すると重大なリスクに直結するNG条文を、ビフォーアフター形式で分かりやすく紹介します。
ビフォー(NG例):「基本給には30時間分の残業手当を含むものとする」
→ 基本給と残業代の内訳が不明瞭なため、固定残業代の規定として無効と判断される極めて高いリスクがあります。
アフター(OK例):「固定残業手当として、月30時間の時間外労働に対する割増賃金として〇〇円を支給する。30時間を超える時間外労働については、別途割増賃金を支給する」
→ 時間数と金額を対応させ、超過分の支払いを明確に記載することで、法的に有効な規程となります。
ビフォー(NG例):「会社の指示に背いた場合は、懲戒解雇とすることがある」
→ 行為内容が曖昧なため、どのようなケースが解雇に該当するのか分からず、不当解雇として争われるリスクがあります。
アフター(OK例):「正当な理由なく無断欠勤が14日以上に及んだとき」「重要な経歴を詐称して雇用されたとき」など、解雇事由を具体的に列挙し、従業員が判断できる明確な基準を設ける必要があります。
→ 解雇の基準を可視化し、法的根拠を強化することで、トラブル時の説明責任を果たすことが可能になります。
ビフォー(NG例):「休憩は12時から13時の1時間とする」
→ 運送業ではスケジュールにより休憩時間が固定できない場合が多く、実態とかけ離れた規定は、監査時に「規程と運用の不一致」と指摘される典型例です。
アフター(OK例):「休憩時間は業務の状況に応じて取得するものとし、連続運転を避けるため〇時間以内ごとに適切な休憩を確保する」
→ 運送業の実態に即した柔軟な記載にすることで、規程と現場運用の整合性を保つことができます。
ビフォー(NG例):「一切の副業を禁止する」
→ 政府方針として副業解禁が進んでいる現在、全面禁止は不適切とされやすく、合理性に欠ける場合は無効と判断される可能性があります。
アフター(OK例):「会社に届け出を行い、業務に支障がなく安全運転義務を阻害しない範囲で認める」
→ 運送業特有の安全性を確保しつつ、合理的な条件を示した規定が求められます。
これらはあくまで一例ですが、古い就業規則には想像以上に違法リスクや説明責任を果たせない危険な条文が残っているケースが多くあります。早急に見直しを行うことで、労基署対策だけでなく、従業員とのトラブル予防にもつながります。
当サイトでは、残業代・人手不足・運送費に悩む運送事業者へ向けて、課題領域別に強みを持つ運送業コンサル会社3選を紹介しています。
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また、2024年問題の本質的な対応には、運行体制だけでなく就業ルールや労務管理の整備が欠かせません。トラブルを未然に防ぐためにも、今の体制にどんな改善の余地があるのかを整理しておきましょう。
就業規則は、単なる“社内ルール”ではなく、企業を守るための最前線の法的ドキュメントです。そのため、企業規模に関わらず、“いま”の体制に合った就業規則へのアップデートが求められています。運送業に特化した実務内容と、頻繁な法改正に対応するには、専門のコンサルタントによるリスク診断と見直しが効果的です。
就業規則の見直しや改訂のほか、残業制度やドライバーの実態に即した賃金制度構築など、自社の課題に合致したコンサルタントを選ぶようにしましょう。
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