2024年問題の今！運送業が今後すべき対策とは？

2024年4月、ドライバーの時間外労働の上限規制（年間960時間）が本格施行され運送業界では“運びきれないリスク”が現実のものとなりました。このいわゆる2024年問題が物流業界に与えた影響は大きく、施行から一年たった現在、運送業者の売り上げや利益の減少、ドライバーの収入の減少、また、それに伴う人材不足など、さまざまな問題が生じています。

ここでは、2024年問題の影響を大きく受ける現在の状況と企業が取るべき実践的な対策、コンサルタントの支援を活用した解決アプローチについて詳しく解説します。

2024年問題が
運送業にもたらした影響

拘束時間の制限で便数が減り、売上減に直結

2024年4月、トラック運転者に対する時間外労働の上限（年960時間）が施行され、拘束時間は原則14→13時間以内、休息時間は8→9時間以上へと変更されました。

その結果、1日の配送件数が減り、売上が1～2割減少した企業も少なくありません。ドライバー1人あたりの稼働時間が短くなったことで、既存体制では荷物をさばききれないという声も増加。追加人員の確保が追いつかず、現場のひっ迫と収益悪化が深刻化しています。

人手が足りずに受注が減り、
収益悪化が加速

労働時間の上限規制により、ドライバー1人あたりの配送本数が大幅に減少。十分な人員を確保できない企業では、受注を断らざるを得ないケースも増え、売上の減少と顧客離れが深刻化しています。

さらに、労働条件の改善が進んでいない企業では、応募が集まらない／若手が定着しないといった課題が顕在化。結果として、現場を支えるベテランドライバーに業務が集中し、疲弊と離職の連鎖が続く悪循環に陥っています。

現場の多忙と主導不在で、
対策が先送りに

「日々の業務で手一杯」「誰が指揮を執るか決まらない」──そうした現場の声を背景に、2024年問題への対応が“やるべきだと分かっていても動けない”状態が続いています。

特に中小企業では、法令や改善基準告示の理解が進んでおらず、社内で実行の主導権を握る人物が不在のケースも多く見られます。その結果、施行から1年が経過した今も、業務フローの見直しや就業規則の整備が手つかずという企業が少なくありません。

2024年問題の対応がすすまない原因

制度理解の浸透不足と
社内温度差

「2024年問題にどう対応すべきか」という共通認識が、現場と経営層のあいだで十分に取れていない企業が多く見られます。現場ではそもそも制度の内容が共有されておらず、一方で経営層は危機感を抱きながらも、何から手を付ければいいか分からず手が止まっているケースも少なくありません。

特に中小企業では、情報収集や社内教育の余裕がなく、社内での意識・知識格差が対応遅れの一因になっています。このままでは、「制度は知っているが動けない」状態が続き、法令違反リスクや人材流出を招く可能性があります。

属人化した配車・運行業務が
改善の壁に

運行や配車業務が特定の担当者に依存し、ベテランの経験と勘に頼った運営体制が今も続いている企業は少なくありません。このような属人化は、業務の全体像が把握しづらく、改善の糸口が見えにくいという課題を生みます。

特に中小運送会社では、運行記録が手書きのままだったり、配車指示が口頭・紙で行われるなど、業務可視化が進んでいないケースが多く見られます。こうした状況では、「どこに無駄があるのか」「どこを改善すべきか」が明確にならず、属人化が制度改革の足かせとなっているのが現実です。

荷主・関係先との交渉が
進められない

2024年問題をきっかけに運賃見直しや納期調整が急務となったにもかかわらず、「立場が弱く交渉が切り出せない」「説明材料がない」といった理由から、交渉が前に進まない企業が多数見られます。

特に中小運送会社では、交渉に使える収支データや業務実績の可視化が不十分なため、説得力のある説明ができず、取引先に対して一方的に条件を受け入れるしかない状況に陥っています。

このような状況を放置すれば、コスト上昇を自社内で吸収し続けることになり、収益悪化やドライバー離職につながるリスクが高まります。

コンサルティングによる
2024年問題対応策

2024年問題への対策は多岐にわたりますが、すべての企業が同じ手順で進めるわけではありません。自社の規模や現状に合わせて、取り組むべきことの優先順位付けが重要です。ここでは、企業規模別のモデルケースをご紹介します。

【ケース1】中小企業（保有台数10〜30台）の場合

よくある課題：社長が配車や営業も兼務しており、対策に時間を割けない。ITツール導入の予算確保が難しい。 対策の第一歩：まずは助成金を活用した勤怠管理ツールの導入で、現状の残業時間を正確に把握することから始めましょう。運賃交渉は、まず関係性の良い荷主1〜2社に絞って打診するのが現実的です。

【ケース2】中堅企業（保有台数31〜100台）の場合

よくある課題：配車係の業務が属人化しており、ドライバー間の労働時間に不公平感が出ている。 対策の第一歩：配車支援システムの導入を検討し、労働時間の平準化を目指します。同時に、不公平感をなくすための評価制度・給与体系の見直しにも着手する必要があります。

2024年問題に対して「動かなければ」と思いつつも、日々の業務に追われて着手できていない──そんな企業は少なくありません。コンサルティングでは、現場の実態に即した対応策を具体的に提示し、計画から実行まで伴走する支援が可能です。

労働時間と配車体制の現状分析

運行データや日報をもとに、労働時間や配車体制を可視化することによって、「何にどれだけ時間を使っているのか」「どこに無駄な待機や空走が発生しているか」といった実態を明らかにすることができます。

これにより、経営層と現場の間で共通の課題認識を持つことができ、属人化した業務の見直しや配車ルールの再設計にもつながります。改善すべきポイントを“数字”で把握できることで、的確な判断と対応が可能になります。

業務の標準化・効率化による対応

コンサルティングの支援例では、TMS（運行管理システム）の導入で配車業務をデジタル化し、誰でも対応可能な体制を構築することも可能です。また、ルート最適化ツールを活用することで、無駄な走行や待機を削減し、効率的な運行が実現されることが見込まれます。

現場の業務フローを洗い出し、手作業や重複作業を排除することで、全体の生産性を向上。また、属人業務を解消し、持続可能な運用体制づくりを支援することができます。

現場の業務フローや配車パターンを棚卸しし、標準化できる工程を抽出。誰でも対応できるマニュアル化や体制構築を支援します。

また、配車システムや労務管理ツールの導入により、業務の可視化・効率化を実現。ルート最適化・作業時間の平準化など、再現性のある“仕組み化”によって、属人化を脱し、持続可能な業務体制へと移行できます。

荷主との取引条件見直し支援

現場の運行データや拘束時間の実績を分析し、客観的な根拠をもとに運賃や待機時間削減の交渉材料を荷主に提示。そのため、属人的な感覚に頼らず、数値を用いた戦略的アプローチで交渉力を強化することが可能です。

また、他社との協業体制を構築することで、積載効率や運行の最適化を実現し、荷主側にもメリットを提示することが可能。そのため、対等な関係性の中で、持続可能な物流の再構築を図ることができます。

拘束時間・待機時間・積載率などの実績データを分析。その上で、交渉材料として活用できる収支シミュレーションを構築します。

また、荷主交渉における対話の進め方、合意形成のステップも併せて支援。数値に基づいた「納得される資料」によって、運賃見直しやリードタイムの調整といった、戦略的な条件変更を実現可能にします。

就業規則や雇用契約の整備サポート

拘束時間・休憩・深夜手当など、2024年問題は就業ルールの見直しを伴います。しかし、現場の実態と法令の乖離に気づかず、知らず知らずのうちにリスクを抱えている企業も少なくありません。

コンサルタントは、現行の就業規則・雇用契約書をチェックし、新しい法改正に適した文言や運用ルールへのアップデートを支援。また、改定後の説明会設計や、従業員からの質疑応答対応までサポートすることで、スムーズな制度定着につなげます。

「対応しなければ」と思っていても、制度整備・交渉・改善にまで手が回らない──そう感じている運送会社は少なくありません。限られた人員で全てを抱え込むのではなく、運送業に特化した外部の支援を活用することが、今動き出すための第一歩になります。

また、2024年問題の本質的な対応には、運行体制だけでなく就業ルールや労務管理の整備が欠かせません。トラブルを招いてしまう前に、今の体制にどんな改善の余地があるのかを整理しておきましょう。

まとめ

拘束時間の短縮や収益悪化、業務属人化、荷主との交渉難航など、2024年問題が運送業にもたらす影響は多岐にわたりました。しかし、施行から一年以上が経った今でも、現場対応が追いつかず、課題を抱えたまま停滞する企業も少なくなく、法令違反や深刻な経営リスクにつながっています。

2024年問題の影響は、単なる法改正ではなく、業務体制・収益構造・関係先との付き合い方までを根本から見直す必要が出ています。契機です。自社で抱え込まず、運送業に精通したコンサルタントとともに、今できる計画的・実効的な対策を行いましょう。